【シリーズ12回】相手の話を聴くとは②

【シリーズ臨床心理士のつぶやき】

前回は「聞く」について書きましたので、今回は「聴く」について書いてみます。前回の内容は以下をご覧ください。

問題が解決していないのに満足?

 まず、聴いてもらうことで相手には何が起きるのでしょうか。前回書いたように、特にアドバイスが欲しいわけでもなく、ただ聴いて欲しいというのがニーズだった場合、聴く側としては「何も助言してあげられなかったなぁ」という気持ちになることがあります。しかし、話し手としては自分の話を聴いてもらうだけで、満足とまではいかなくても溜飲が下がったり気持ちがラクになったりします。これはなぜなのでしょう。

助言がかえって相手を否定することも

 心理学、特に臨床心理学領域では「do」と「be」を区別します。一般にdoは「~~する」という意志・言動を表し、beは「~~である」という存在・状態を表します。一般的な相談における助言は、「~~すればいいんじゃない?」というdo志向で行われることが多いです。つまり、問題に対する具体的な解決策を提示することで、相手の悩みを解決しようとします。多くの場合、それが相談者も求めているものです。ところが、「学校に行きたくても行けない」など、頭では~~しないといけないと分かっているのにできなくて困っている場合、do志向の助言だけではうまくいかないことがあります。また、病気等で体が思うように動かせなくて生きる気力がない、といった深刻な悩みに対しても、do志向の助言だけではうまくいきません。
 「〇〇してみたらどう?」といった助言はもちろん相手のためを思ってのことばですが、言われた方としては「分かるけどそれができないから困っている」「できない自分はダメなんだ」といった具合に、助言を実行できない自分をだんだんと責めていきます。極端に言えば助言が、「今のあなたのままではダメだから〇〇しなさい」という風に聞こえてしまうのかもしれません。

相手の存在そのものを肯定する態度

 一方で聴くというのはおもにbe志向に重きを置いた聞き方で、まずは相手の存在を受け止め、理解し、共感を示すところから始まります。「自分が体験したことないのに共感するなんて無理じゃない?」と思われるかもしれませんが、実は可能です。共感とは助言的態度ではなくて、「〇〇であなたは今△△なのね」と、相手の話した内容を私はこんな風に理解しましたよ、というbe志向の態度で伝え返せばいいのです。その時に返すことばに特に決まりはなく、「それは大変だったねぇ」「そうなんだ」「うんうん」「なるほどなぁ」など、様々な伝え方があります。
 このようにbe志向で話を聴いてもらうことで、話し手は自分の存在を受け止めてもらえたと感じ、こころが少し軽くなると考えられています。この方法は癇癪や行動で自分の気持ちを表しやすい子どもに対して根気よく続けることで、子どもが自分で徐々に気持ちをコントロールできるようになると言われています。また、子ども・大人に限らず、低下してしまった自己肯定感の回復にも役立ちます。だから、問題が解決したわけではないのに話を聴いてもらうだけで満足感が生まれるのだと思います。こちらも極端に言えば、「何があろうとあなたは存在していいんです」というメッセージを伝えていると言えるかもしれません。

「聞く」・「聴く」はどちらも大切

 このような文章を目にすると、あたかも「聞く」よりも「聴く」のほうが優れてるんじゃないの?と思われるかもしれませんが、決してそんなことはありません。どちらも必要であり、相手のニーズに応じて使い分けることが大切です。自分が今どのような聞き方をしているのか、相手のニーズは何なのか、話を聴いてほしいのか解決策を求めているのか、そこを見極めることが肝要です。それって一見難しいことのように思われるかもしれませんが、実は結構シンプルです。話を聞いている途中の所々で、「あなたが困っているのは〇〇ということで合ってますか」「私は〇〇という風に理解しましたがそれで合ってますか」と、言い方は様々ありますが相手に確認すればいいのです。早合点して助言をすると的外れになることもありますので、くれぐれも気をつけましょう。

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