【2025年度日本史解説速報!】同志社大学の日本史の問題を解いてみた!【その2】

【シリーズ】藤井の過去問解説

こんにちは。創心館の藤井です。

今回は、2025年度・同志社大学の日本史の大問〔Ⅲ〕の解説を、特別速報版で行います。

ではさっそく解説に入ります!

〔Ⅲ〕戦後の歴史総合問題

【設問ア】
正解は、「治安警察法」です。設問文に「1900年に第二次山県有朋内閣で制定された法律」とありますから、治安警察法が正解です。「治安維持法」と混同しやすいので、以下にまとめておきましょう。

治安警察法と治安維持法の違いをチェック!

治安警察法(1900年・第2次山県有朋内閣)
 女子の政治集会参加・結社の禁止(第5条)・団結権やストライキ権を制限(第17条)

治安維持法(1925年・第1次加藤高明内閣)
 国体の変革と私有財産制度否認の結社を弾圧
 →改正(1928年・田中義一内閣)…緊急勅令で最高刑を死刑
 →再改正(1941年・米内光政よないみつまさ内閣)…釈放予定の者を予防拘禁所よぼうこうきんじょに収容できる

治安警察法も治安維持法も、戦後まで存続したことに注意!

【設問イ】
正解は、「過度経済力集中排除法」です。財閥解体を進めていく上で重要な法律とされました。
「過度(に)経済力(が)集中(するのを)排除(する)法」というふうに理解しておくようにしましょう。

財閥解体のポイントはコレ!

○財閥解体の目的…持ち株の分散人的支配の排除
 →持株会社整理委員会が実施(84の持株会社を指定)
 ①独占禁止法(1947年)…独占禁止・不公正取引の禁止・公正取引委員会が監視
 ②過度経済力集中排除法(1947年)…大企業の分割(325社を指定)
                   →実際に分割されたのは11社のみ

【設問ウ】
正解は、「自作農創設」です。財閥解体と並んで経済の民主化として行われた農地改革は、地主と小作人の関係を整理し、自作農を増やすことが目的でした。

農地改革のポイントはコレ!

○農地改革の目的…寄生地主制の解体自作農の創設→農地改革指令(1945年)
 ①第一次農地改革(1946年・幣原喜重郎しではらきじゅうろう内閣)…農地調整法を改正するが、不徹底
 ②第二次農地改革(1946年・第1次吉田茂内閣)…自作農創設特別措置法
  ○不在地主の小作地・在村地主の1町歩(北海道は4町歩)を超える小作地の解放
  ○国家が買収し、小作人に売却(第一次では地主と小作人の協議だった)
  ○小作料の金納(第一次では物納も可能だった)
  ○農地委員会地主3:自作2:小作5)(第一次では地主5:自作5:小作5だった)
 →小作地の80%を解放

【設問エ】
正解は、「労働関係調整法」です。労働三法が言えれば非常に楽な問題でした。

労働基本権についてはコレを押さえろ!

労働三法
 労働組合法(1945年)…団結権・団体交渉権・争議権の保障
 労働関係調整法(1946年)…労働争議の調停
 労働基準法(1947年)…8時間労働制・女子や年少者の深夜就業禁止
○労働組合の結成…産別会議(1946年・左派)VS総同盟(1946年・右派)
食糧メーデー(1946年)…皇居前広場でデモ活動
二・一ゼネスト計画(1947年)…全官公庁共同闘争委員会が主催→GHQ命令で中止

【設問オ】
正解は、1(金融緊急措置令)です。
本文中の空欄の前後を確認すると、「…猛烈なインフレーションが起こった。幣原内閣は( オ )によって、預金封鎖による旧円の引き出しを禁止し、新円の通貨流通量を制限する」とあります。
旧円が世の中に流通すると、通貨の価値が下がってインフレーションになりますから、いったん旧円の流通をストップさせる必要があります。幣原喜重郎内閣は、金融緊急措置令を出してストップさせますが、効果は一時的なものでした。
このように、戦後の混乱期の経済政策については、以下の要領で押さえておく必要があります。

戦後の経済政策は「4人のドクター」で押さえよう!

「4人のドクター」とは、幣原喜重郎・吉田茂・ドッジ・シャウプの4人!

(1)戦後の日本経済
 ①物不足・超インフレ復員ふくいん引揚げひきあげで人口が増加し、農工業生産が落ち込んだ→買い出しや闇市やみいちなどで生計
 ②アメリカの援助ガリオア資金(食糧・医療への援助)・エロア資金(産業への援助)
 →金融緊急措置令(1946年・幣原喜重郎内閣)…預金封鎖・新円切換(効果は一時的)
 →経済安定本部の設置(1946年・第1次吉田茂内閣)…のち経済企画庁に(1955年)
  ○傾斜生産方式有沢広已ありさわひろみの提案)…石炭・鉄鋼に資金を集中させる
  ○復興金融金庫…政府の金融機関で、資金を石炭・鉄鋼・電力に貸し付ける
  ※片山哲かたやまてつ内閣・芦田均あしだひとし内閣もこれを継承する

(2)経済の自立
  経済安定九原則(1948年)…財政再建とインフレ収束をめざすデフレ政策
   ①ドッジ=ライン(1949年・デトロイト銀行頭取)…赤字を許さない超均衡予算
   ②単一為替たんいつかわせレート(1949年・1ドル=360円
   ③シャウプ勧告(1949年・コロンビア大学教授)…税制改革(直接税中心に徴税強化
   →インフレは収束するが、中小企業倒産・失業者急増による社会不安                            

【設問カ】
正解は、「1947年2月1日」です。
「二・一ゼネスト計画」がGHQによって中止に追い込まれたのは基本的な内容ですが、年代まで答えるとなると「1946年だっけ?1947年だっけ?」と迷う受験生も多かったのではないでしょうか。

【設問キ】
正解は、2(徴税強化)です。
【設問オ】で学習した「経済安定九原則」の9つの項目を、すべて暗記している受験生は少ないと思いますが、シャウプ勧告で「直接税を中心に徴税を強化した」という内容から判断して、正解に導きたいですね。

【設問ク】
正解は、2(田中角栄かくえい)です。
設問文に「1973年」とあり、この年に第一次石油危機が起きていることから、田中角栄を導きましょう。
第一次石油危機を境とした、1970年代の政権の推移をまとめておきましょう。すべて自由民主党の内閣ですよ。

1970年代の政権の推移はこれで十分!

(1)第1次~第3次田中角栄内閣(1972年7月~)
   日中共同声明(1972年/田中角栄首相・大平正芳おおひらまさよし外相と周恩来)…日中国交正常化
   「列島改造政策」・第一次石油危機(1973~1974年)
   →戦後初のマイナス成長・金脈問題で退陣

(2)三木武夫みきたけお内閣(1974年12月~)
   「クリーン政治
   第1回サミット(1975年)
   ロッキード事件(1976年・田中角栄逮捕)

(3)福田赳夫ふくだたけお内閣(1976年12月~)
   「内需拡大
   日中平和友好条約(1978年/園田直そのだすなお外相と黄華こうか外交部長)
   「ガイドライン」(日米防衛協力のための指針・1978年)

(4)第1次~第2次大平正芳内閣(1978年12月~)
   第二次石油危機(1979年)・元号法(1979年)・東京サミット(1979年)
   →衆参同日選挙中に急死

【設問ケ】
正解は、3(松川事件)です。
設問文に「1949年8月、日本国有鉄道東北本線で列車転覆事件が起こった」とありますので、東北本線の福島県松川駅で起こった松川事件が正解です。1949年には、1の下山事件(国鉄総裁の下山定則しもやまさだのり轢死体れきしたいで発見される)、4の三鷹みたか事件(国鉄三鷹駅の構内で列車が暴走した)と、国鉄の怪事件が相次ぎました。
2の福島事件は、明治時代の1882年に、福島県令の三島通庸みしまみちつねが県会議長の河野広中こうのひろなからを逮捕した事件です。

【設問コ】
正解は、3(日本労働組合総連合会)です。
戦後の労働組合の組織についてはなかなか難しい内容ですので、以下にまとめておきましょう。

戦後の労働組合の組織については年代順で押さえておこう!

≪1940年代≫
○全日本産業別労働組合会議(産別会議・1946年)…共産党の指導で優勢に立つ
○日本労働組合総同盟(総同盟・1946年)…反共産主義をかかげる

≪1950年代≫
○日本労働組合総評議会(総評・1950年)…日本社会党を支持

≪1960年代≫
○全日本労働総同盟(同盟・1964年)…総同盟など3つの組織が合流して誕生し、総評と対抗した

≪1989年≫
○日本労働組合総連合会(連合)…総評と同盟が合流して誕生・現在では立憲民主党などを支持している

【設問サ】
正解は、4です。
設問文で「1950年後半から1970年代初頭に至る時期」とありますが、4の「阪神急行電鉄(現在の阪急電鉄)などの私鉄が経営するターミナルデパートが出現」したのは、1929年の大正時代のことでした。時期がずれるので誤りとなります。

【設問シ】
正解は、3(地下鉄)です。
日本の地下鉄は、1927年に浅草・上野間を結んだのが最初で(現在の東京メトロ銀座線)、1933年には大阪市営地下鉄(現在の大阪メトロ)御堂筋線みどうすじせんが二番目の地下鉄として開業しました。
1は1965年に名神高速道路が開通、2は1964年に東海道新幹線が開通、4のモノレールは1964年に東京の浜松町と羽田空港第2ターミナル間で開通しています。

【設問ス】
正解は、「新産業都市」です。
あまりなじみのない用語ですので、正解した受験生は少なかったのではないでしょうか。
現在では、この法律は効力が停止されています。

【設問セ】
正解は、2(栃木県)です。
設問文に「足尾銅山の鉱毒」「田中正造」とありますので、足尾銅山鉱毒事件の説明と分かりますし、足尾銅山の位置は必ず押さえておかなければならないところですね。

【設問ソ】
正解は、「美濃部亮吉みのべりょうきち」です。
本文の空欄の前後を確認すると、「1967年に東京都知事に初当選した( ソ )」とあります。同志社大学を受験するのであれば、このくらいのレベルは押さえておいて損はありません。
美濃部亮吉は、大正デモクラシーの時の天皇機関説で有名な美濃部達吉を父にもつ、マルクス主義経済学者でした。1967年から1979年まで東京都知事をつとめました。

おわりに

さて、二回にわたって同志社大学の日本史の解答と解説を速報版で紹介しましたが、2026年度の受験生にはぜひ読んでいただきたいと思い、かなり解説を充実させました。

同志社大学をはじめとする難関私立大学では、手も足も出ないような用語ばかりが出題されるわけではないことが、お分かりいただけたのではないでしょうか。

今後も最新の入試問題を入手しだい、解説を書いていこうと思います!

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
次回もどうぞお楽しみに!

本日も創心館のブログにおいでいただき、ありがとうございました。

文責:藤井 宏昌

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