アメリカ英語とイギリス英語の違い
英語を学んでいると、「同じ英語なのに言い方が違う!」「発音が全然違う!」と驚くことがありますよね。
実は、英語には大きく分けてアメリカ英語(American English)とイギリス英語(British English)という2つの主要な種類があり、それぞれに特徴があります。
今回は、挨拶・発音・スペル・文化・日本との関わりという5つの視点から、両者の違いをわかりやすく紹介します。特に留学や英語試験を考えている中高生・保護者の方は、実践的な知識として知っておくと役立ちます。
挨拶の違い ― フレンドリー vs 丁寧
挨拶は、その国の「人との距離感」がよく表れる部分です。
アメリカ英語とイギリス英語では、同じ英語でも挨拶の仕方やニュアンスが大きく異なります。
🇺🇸アメリカ英語はとにかくフレンドリー!
アメリカでは、初対面でも明るく気さくに話しかけるのが一般的です。
代表的なのは「Hi!」「Hey!」に加えて、「How’s it going?」という挨拶です。
🧍♂️「Hey, how’s it going?」
☕️「Good, thanks! You?」
この “How’s it going?” は「調子どう?」くらいの意味で、返答も「I’m good.」「Pretty good.」など軽い一言でOKです。
教科書では “How are you?” に対して “I’m fine.” と答えると習いますが、実はネイティブの会話では “I’m fine.” は少し堅苦しく、よそよそしい印象になることがあります。自然な返答は「I’m good.」「I’m doing well.」「Not bad.」などです。
🌍実は🇬🇧イギリスや🇦🇺オーストラリアでも使われる “How’s it going?”
「How’s it going?」はアメリカだけでなく、イギリスやオーストラリア、カナダなどでも広く使われるカジュアルな挨拶です。
ただし、地域ごとにニュアンスや使う場面には少し違いがあります。
- イギリス:若者や親しい人の間でよく使われますが、フォーマルな場面では「Hello.」や「How are you?」の方が好まれます。また、「Alright?」「You alright?」といったイギリス独特の挨拶もよく使われます。
- オーストラリア:日常的に非常によく使われます。「G’day, how’s it going?」のように、オーストラリアらしい挨拶と組み合わさることも多いです。
つまり “How’s it going?” は「アメリカ特有の表現」というより、英語圏全体でフレンドリーな挨拶として浸透していると考えるとよいでしょう。
🇬🇧イギリス英語は丁寧で落ち着いた印象
一方、イギリスでは伝統的な挨拶の形式が今も根強く残っています。
基本は「Hello.」や「Good morning.」など、きちんとした表現。特に目上の人や初対面の相手には、この形式を大切にします。
🧍♀️「Good morning. How are you?」
☕️「I’m very well, thank you. And you?」
ここでも「I’m fine.」は悪くはありませんが、「I’m very well.」など、より丁寧な表現の方が自然です。
また、親しい間柄やカジュアルなシーンでは、「Good morning.」を短くして“Morning!” とだけ言うこともよくあります。これは「おはよう!」くらいの軽い挨拶で、先生と生徒、友人、職場の同僚などの間でよく使われます。
発音の違い ― “r”と母音に注目!
アメリカ英語とイギリス英語の発音で、まず押さえておきたいのが“r”の発音です。
アメリカ英語は “r” をはっきりと発音しますが(r音性)、イギリス英語は語末の “r” を発音しない傾向があります(非r音性)。
- car
- 🇺🇸 アメリカ式:kɑːr(カー)
- 🇬🇧 イギリス式:kɑː(カー/「r」を言わない)
次に、母音の違いも重要です。代表的な単語を見てみましょう👇
単語 | アメリカ英語 🇺🇸 | イギリス英語 🇬🇧 |
---|---|---|
dance | dæns(ダンス) | dɑːns(ダーンス) |
schedule | skedʒuːl(スケジュール) | ʃedjuːl(シェジュール) |
tomato | təˈmeɪtoʊ(トメイトウ) | təˈmɑːtəʊ(トマートウ) |
イギリス英語は母音を長く・滑らかに発音する傾向があり、アメリカ英語に慣れていると聞き取りに苦労する人も多いです。映画や留学先で「聞き取れない!」となる原因の多くは、この発音の違いです。
※ブリティッシュアクセントはクセがありますが、個人的に好きです笑
スペル(つづり)の違い ― パターンと歴史
スペルの違いには、いくつかの明確なパターンがあります👇
パターン | アメリカ英語 🇺🇸 | イギリス英語 🇬🇧 | 例 |
---|---|---|---|
or → our | color | colour | flavor / flavour |
er → re | center | centre | meter / metre |
ize → ise | organize | organise | realize / realise |
単子音化 | traveled | travelled | canceled / cancelled |
なぜ違いが生まれたのか?
18〜19世紀、アメリカが独立したあと、ノア・ウェブスター(Noah Webster)という辞書編纂者が、イギリス英語の複雑な綴りを「もっと論理的で簡単にしよう」と改革を進めました。
たとえば「colour」の “u” を取って「color」にしたのは、まさにこの改革の一例です。
その結果、アメリカは合理化・簡略化されたスペルを採用し、イギリスは伝統的な綴りを維持する道を選びました。
日本の教科書ではアメリカ式のつづりが多いため「color」が当たり前に見えますが、世界ではイギリス式の「colour」も広く使われています。
文化の違い ― 言葉の奥にある「距離感」
言葉の違いの背景には、その国の文化や考え方が深く関わっています。
アメリカは移民国家で、オープンでフレンドリーな会話が重視される一方、イギリスは階級社会の歴史を持ち、伝統・控えめな表現が今も残っています。
例えば、カフェでの注文:
- 🇺🇸 アメリカ
「Can I get a coffee?」 → ストレートでカジュアル。 - 🇬🇧 イギリス
「Could I have a coffee, please?」 → 控えめで丁寧。直接的すぎる表現は避ける傾向。
さらに、イギリスでは皮肉・ユーモア・社交辞令も重要な文化要素です。
たとえば「That’s interesting.(興味深いですね)」は、実は「微妙だな…」という遠回しな否定の意味で使われることもあります。
言葉は理解できても、裏のニュアンスが違うことで誤解が生まれることもあるため、留学を考える際には文化的背景の理解も欠かせません。
イギリスで用いられる皮肉・ユーモア・社交辞令はまた別の記事で紹介したいと思います。
日本の英語とのかかわり ― 「アメリカ式」が中心だが…
日本では、戦後のアメリカ文化の影響で、アメリカ英語が教育の中心となりました。
教科書やALTの先生、発音記号、リスニング教材などもほとんどがアメリカ式です。
しかし、英検やTOEIC、IELTSなどの試験ではイギリス英語も出題されます。特にIELTSはイギリス式が基本なので、留学を目指す中高生は両方に慣れておくことが重要です。
まとめ
アメリカ英語とイギリス英語の違いは、単なる発音やつづりの差ではありません。
そこには、それぞれの文化・歴史・価値観がしっかりと息づいています。言い換えれば、英語にも“個性”があるということです。
どちらが正しい・間違っているという話ではなく、両方を知ることで英語がもっと立体的に見えてきます。
中高生のみなさんにとっては、リスニングや発音の幅を広げるチャンスになりますし、保護者の方にとっても、留学先や英語教育を考えるうえで大きなヒントになるはずです。
これからの英語学習では、どちらか一方だけを覚えるのではなく、違いを理解したうえで、場面によって自然に使い分けられる力を身につけることが大切です。
英語の“多様性”を楽しみながら、学びを一歩深めていきましょう!