年末年始。
街は一気にお正月ムードになり、テレビをつければ特番、親戚の集まり、友人からの誘い――。
一方で、受験生にとっては「本番まで残りわずか」という、最も緊張感の高まる時期でもあります。
この時期、毎年必ず聞かれるのが次のような声です。
- 「年末年始って、どれくらい勉強すればいいんでしょうか」
- 「お正月くらいは休ませたほうがいいですか?」
- 「他の受験生はどんな過ごし方をしているんですか?」
今回は、塾講師として多くの受験生を見てきた立場から、
年末年始をどう過ごすべきかについて、現実的かつ具体的にお話しします。
1.まず大前提として知っておいてほしいこと
年末年始は、「特別な期間」ではありますが、
受験勉強においては“例外期間”ではありません。
入試日は、年末年始だからといって延びてくれるわけではありません。
むしろ、多くの受験では
- 私立入試:1月中旬〜下旬
- 共通テスト:1月中旬
- 公立高校入試:2月〜3月
と、「年末年始のすぐ先」に本番が控えています。
つまりこの期間は、
休むかどうかを悩む時期
ではなく
どう質の高い勉強を積み重ねるかを考える時期
なのです。
2.「ずっと勉強し続ける」必要はないが、「完全オフ」は危険
よくある誤解のひとつが、
- 「お正月くらいは完全に休んだほうがいい」
- 「メリハリが大事だから、数日勉強しなくても問題ない」
という考え方です。
結論から言うと、
完全オフはおすすめしません。
理由はシンプルです。
● 勉強は「慣性のある行動」だから
勉強は、自転車と同じで、
- こぎ続けていれば安定する
- 止まると、再び動き出すのが一番しんどい
年末年始に数日間まったく勉強しないと、
- 集中力が落ちる
- 勉強モードに戻るまでに時間がかかる
- 「まあいっか」が増える
という状態になりやすいのです。
特に受験直前期は、
勉強の“量”よりも“リズム”が崩れることの方が致命的です。
3.理想は「勉強量を少し落として、質を上げる」
では、どう過ごすのが理想なのか。
おすすめなのは、
勉強量は通常よりやや減らし、
内容を“整理・完成”に寄せる
という過ごし方です。
具体的には…
- 新しい問題集を始めない
- 難問に手を広げすぎない
- これまでやってきた教材を「できる状態」に仕上げる
年末年始は、
- 「できなかったことを増やす時期」ではなく
- 「できることを確実にする時期」
です。
4.年末年始にやるべき勉強①:総復習
この時期に最優先すべきなのは、総復習です。
● 「わかる」と「解ける」は違う
多くの受験生は、
- 解説を読めば理解できる
- 授業中はうなずける
けれど、
- 一人で解くとミスする
- 時間がかかる
- 本番形式だと点が取れない
という状態にあります。
年末年始は、
- 英単語・熟語
- 数学の典型問題
- 理社の重要語句
- 古文単語・文法
など、点数に直結する基礎の確認に最適な期間です。
5.年末年始にやるべき勉強②:過去問・予想問題の「分析」
もし過去問や予想問題に取り組むのであれば、
ただ解くだけで終わらせてはいけません。
重要なのは、
- どこで失点したか
- なぜ間違えたか
- 次に同じ問題が出たらどうするか
を言語化することです。
年末年始は時間が比較的取りやすいため、
- 1問1問を丁寧に振り返る
- ノートにまとめる
- 自分の弱点を整理する
といった「分析」に向いています。
6.年末年始にやるべき勉強③:生活リズムの固定
意外と見落とされがちですが、
生活リズムの管理は、勉強内容と同じくらい重要です。
● 寝る時間・起きる時間を固定する
- 夜更かし → 朝寝坊
- 「今日は正月だから…」が続く
この状態が続くと、
試験当日にベストなコンディションを作れません。
年末年始こそ、
- 起床時間を一定にする
- 試験時間帯に頭が回るよう調整する
という意識を持ってほしいと思います。
7.保護者の方にぜひ意識していただきたいこと
ここからは、保護者の方へのメッセージです。
年末年始は、家庭の雰囲気が受験生に大きく影響します。
● 「勉強しなさい」は逆効果
受験生本人が一番、
- 勉強しなければならないこと
- 時間がないこと
を分かっています。
この時期に必要なのは、
叱咤激励よりも環境づくりです。
● 家庭でできるサポート
- テレビの音量を控える
- 勉強時間を尊重する
- 生活リズムを一緒に整える
- 「体調だけは気をつけてね」と声をかける
こうした関わりが、
受験生の集中力と安心感を支えます。
8.「周りと比べない」ことの大切さ
年末年始は、
- SNS
- 友人の話
- 親戚からの何気ない一言
などで、気持ちが揺れやすい時期でもあります。
しかし、受験は他人との比較ではなく、昨日の自分との比較です。
- 去年の今より何ができるようになったか
- 1か月前より何が安定したか
そこに目を向けてください。
9.年末年始は「不安があって当たり前」
最後に。
この時期、不安が出てくるのは当然です。
- 本当に間に合うのか
- もっとできることがあるのではないか
- 周りはもっと勉強しているのではないか
不安があるということは、
それだけ本気で向き合っている証拠です。
大切なのは、
不安を消そうとすること
ではなく
不安があっても、やるべきことをやること
です。
10.年末年始は「差がつく」より「崩れない」ことが大事
年末年始は、「一気に伸ばす期間」ではありません。
むしろ、
- 崩れない
- 迷走しない
- 積み上げてきたものを守る
そのための期間です。
焦らず、しかし止まらず。
一日一日を丁寧に積み重ねていきましょう。
受験本番は、
これまで積み上げてきた時間が、必ずあなたを支えてくれます。
