シリーズ第20回「『自分の好きなこと』で人の役にたつには」

【シリーズ臨床心理士のつぶやき】

好きなことで収入を得るのは簡単ではない

 「自分の好きなこと」、皆さんありますか?将来の夢と言われてもピンと来ないかもしれませんが、好きなことだったらいくつか思いつくかと思います。今回は、「自分の好きなこと」について考えてみたいと思います。
 好きなことを仕事にしている人の例としてまず思い浮かぶのが、スポーツ選手と呼ばれるアスリート、漫画家、歌手、ゲームクリエイター、パティシエ・・・他にも色々あるかと思います。これらの人に共通しているのは、自分の好きなことを続けて収入を得ているという点です。これらの職業に対してはときに、「好きなことやってお金もらえて羨ましいね」と言われることもありますが、好きなことで生きていく(お金を稼ぐ)というのは生易しいことではありません。ましてや、職業につけるレベルに達するには相当の時間と努力が必要になります。

仕事とは本来誰かの役にたつもの

 世の中の職業には「援助職」と呼ばれる、誰かを助けることを生業とするものが多数あります。例えば、医師、弁護士、看護師、救急救命士、臨床検査技師、歯科技工士、作業療法士、介護福祉士、カウンセラー、などです。これらは先に述べた職業と違って、もともと好きだったからという理由で選択される職ではないと思います。これらの職業は、誰かを直接・間接的に援助するため、人の役に立つ職業として周囲からも見られやすく、大変ではありますがやりがいもある仕事と言えます。
 そもそも仕事というのは本来、自分ができないことを誰かにやってもらってその対価を支払うものです。需要があるから仕事として成り立つわけで、需要が無くなってしまえば対価(収入)を得られませんから、その仕事はなくなってしまいます。公務員という職業がなぜ安定していると言われるのかというと、まさに「無くなることがない」、「無くなると我々の生活が困る」からです。職業を選択する際に、自分のすきなことができるから公務員になろうとする人はあまり多くないのではないでしょうか。やはり安定した収入を得られるという点が、公務員の魅力として強いような気がします。

「好きなもの」を突き詰めると博士に!?

 では、「自分の好きなこと」を仕事にしたら、それは人の役に立つ職業にならないのでしょうか。もちろんそんなことはありません。「人の役に立つ」というのは、誰かを助けることだけでなく誰かを幸せにすることも含み、一括りに言えば誰かが求めているモノや価値を提供すること、と言えるでしょう。世の中すべての人にとって必要な仕事もありますが、非常にニーズの少ない隙間産業的な仕事もあります。
 私は今回の記事を書くにあたって、真っ先に浮かんだのが「さかなクン」でした。ご存知かと思いますが、彼(実は50歳!)は子どもの頃からとにかく魚が大好きで、魚博士でした。そこまで一つのことに熱中できるのはもはや才能と呼べるかもしれませんが、さかなクンも今では大学教授になっています。大学教授になれたということは、彼の持つ知識を大学側が必要としたからで、その知識を学生に学んでもらいたいと思ったからでしょう。つまり、さかなクンは「魚」という自分の好きなことに関する知識を、誰かに教えるという形で人の役に立っているわけです。
 他にも身近な例で言えば、私たちは仕事でPCを使用していますが、ことPCに関しては専門外です。ましてやプリンターが不調になったときや、Wi -Fi が不調になったときは、業者を呼ばないと手も足もでません。そんなOA機器に関するトラブルを、ほんの数分で解決してくれたときには、「マジ神」と思いましたね。これがもし、OA機器を扱う職業についていなくてもその分野に詳しい人であれば、困った人にとっては十分役に立てるわけですね。

好きなことだから仕事にしたくない人もいる

 というわけで、私は是が非でも「自分の好きなことを仕事にすればいい」とは考えていません。実際、好きなことだからこそ、仕事にはしたくないと考える人もいます。仕事になった途端どうしても収入を得ないといけませんから、それまで好きだったモノに対する向き合い方が変わり、ストレスを感じてしまうことがあるのです。
 自分の好きなことで人の役に立つには、やはり好きなことを突き詰め、それを続けていくことだと思います。それが将来の仕事になってもならなくても、何かの分野に精通している人は何らかの形で誰かの役に立つことができると思います。「あの時の経験がここで役にたつなんて!」ということも、実際あり得ます。
 職業選択というのは人生において非常に大きな決断であるため、簡単に就職・退職・転職をすることはできません。自分の気持ちと将来の見通しを検討し、納得がいくまで悩めばいいと思います。ある程度の年齢を過ぎるとやり直しが困難になりますが、20代の間は色々と軌道修正をしやすいです。たとえ後悔をしたとしても、それを次の糧として次に精一杯頑張ればなんとかなるのです。

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