【シリーズ第4回】甘えることと自信について

【シリーズ臨床心理士のつぶやき】

依存と自立

 一般的に「甘える」とは、「〇〇やって~」「△△が欲しい~」と他者に要求を伝え、それを実現してもらうことだと思われているでしょう。その要求を受け入れすぎると「甘やかしすぎ」と言われがちですが、別の考え方もあります。心理学的な「甘え」とは子どもの「依存と自立」に深く関わっており、安心できる相手に十分依存する(甘える)ことで他者への信頼感が育ち、きちんと親から自立していけると考えられています。ここで言う「甘える」とは、子どもが感じた様々な欲求や感情(意思としましょう)を「表現」し、親に「~~と思ったのね」と気持ちを受けとめてもらうことや実際に実現してもらうことを意味しています。これは、エネルギーが少なくなったので基地に戻って補給してもらい、再び出発していくイメージに似ています。

甘やかしは親自身の不安解消?

 一方、「甘やかす」とはどういうことかと言うと、例えば子どもが意思を表現する前に「~~したほうがいい(~~してはダメ)」という親の「思い」であれこれ先回りすることや、望んでもない物を過度に与えることが挙げられます。そうなると子どもは自分で考える機会を持てず、自分で考えて行動する「主体性」が育ちにくくなると考えられています。子どもが小さいうちは危険も多いためどうしても親が先回りせざるを得ませんが、時には親自身が先々のことに不安や心配を強く感じてしまい、つい色々なことに口を出してしまうこともあります。できるだけ子どもの成長に伴って徐々に「こうしなさい」という指示を減らし、「どう思う?どうしたほうがいい?」といった自分で考えさせる伝え方をしたいものです。

自由には不自由さが必要

 「じゃあ好きなだけ甘えさせていいのか?」というと、そうでもありません。子どもの成長には、自由と不自由さとのバランスが大事だと思います。親が子どもの要求を実現できないときは子どもの気持ちは受けとめつつ、なぜダメなのかをきちんと説明する伝え方が望ましいでしょう。なんでも自分の要求が通り、自分の思い通りになる子ども時代を過ごしたら、大人になってからとっても困ることになるのは容易に想像できるかと思います。なんでも叶う自由な状態では現実の壁にぶつかることがないため、困ったときにどうすればいいのかを考える経験が不足していきます。だから親が現実的なルールである「枠」を提示し、その中で自分の思いを実現するにはどうすればいいのかを子ども自身が考えることが望ましいと思います。一見矛盾している「不自由な自由」が、子どもの成長には大切かと思います。

「好きなこと」が自信につながる

 私は甘えることで得られる最大のメリットは、「他者への信頼感」と「自己肯定感」を得られることではないかと考えます。自分が表現したものを受けとめてもらえると、子どもは「こう思っていいんだ」と自分の気持ちを信頼することができます。私はそれも「自信」と呼べるのではないかと思います。何かができるようになるのは、確かに素晴らしいことかもしれません。けれども、子どもが自分の、あるいは親が自分や子どものできないことを認め、受け入れることも同じくらい素晴らしいことだと思います。日本では「~~ができる」ということを表現しすぎると調子に乗っていると思われやすく、謙虚であることが美徳とされやすい風潮があります。それは決して悪いことではありませんが、「自信」を持つことも必要不可欠だと思います。自分に自信を持つための一番簡単な方法は、自分の好きなことを誰かに肯定してもらうことだと思います。だから我々カウンセラーは、子どもたちの好きなことに関心を向けて話を聴いていくことが多いのです。

※この記事は過去の投稿に若干手直しを加えたものです。

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