こんにちは。
創心館の社会科担当の藤井です。
今回は、2025年度の同志社大学の日本史の問題解説のうち、〔Ⅰ〕と〔Ⅱ〕を特別速報版でお届けします。
この問題の対象学部は、
○法学部
○文学部
○商学部
○社会学部
○政策学部
○心理学部
○経済学部
○グローバル地域文化学部
○文化情報学部
○グローバル・コミュニケーション学部
○スポーツ健康科学部
○神学部
となっております。
では、さっそく〔Ⅰ〕の解説に入ります!
〔Ⅰ〕中世の外交について





【設問A】
a 正解は、「石築地」です。モンゴルの再襲来に備えて博多湾岸に築かせた石造の防塁といえば、「石塁」が想起されますが、「漢字3字」という条件ですので、なかなか難しかったと思います。
b 正解は、「筥崎宮」です。「博多湾岸の神社」ということですが、これもなかなかの難問です。
c 正解は、「高麗」です。建国者である王建という人物を知らなくても、本文中に「1392年に( c )から朝鮮(李朝)へ王朝が交替した」とあり、設問文でも「元の属国になりモンゴル襲来にも参加した」とありますから、基本的な問題ですね。
d 正解は、「日本国王」です。室町幕府第3代将軍足利義満は、明の皇帝に国書を送り、皇帝からの返信文の中に「日本国王源道義」(源道義=足利義満のこと)という文言がありました。日本と明の冊封体制が理解できているかどうかが問われました。
e 正解は、「大蔵経」です。「仏教の経典を網羅的に集成したもの」とあり、日朝貿易で輸入されました。「経典」が輸入されたことは知っていても、その具体的な名称である「大蔵経」を知っている受験生は少ないと思います。
f 正解は、「木綿」または「綿布」です。日朝貿易最大の輸入品であり、「衣料など人々の生活様式に大きな影響を与えた」とありますから、これは落とせない問題です。日本に輸入された木綿は日本でも栽培されるようになり、三河木綿(現在の愛知県東部)や河内木綿(現在の大阪府南東部)として有名になりました。
g 正解は、「応永の外寇」です。「1419年に朝鮮が倭寇の本拠地とみなした対馬を襲撃する事件」とありますが、受験生が間違いやすいものに「刀伊の入寇」があります。これは平安時代の1019年に、女真族が九州北部を襲撃した事件として有名です。「刀伊の入寇の400年後が応永の外寇」と覚えておくといいですね。
刀伊の入寇と応永の外寇をしっかり区別しよう!
○刀伊の入寇(1019年)…女真族が九州北部を襲撃した事件で、藤原隆家(大宰権帥)が撃退
※朝鮮では女真族のことを「刀伊」といい、のちに金を建国した
○応永の外寇(1419年)…朝鮮が倭寇の本拠地とみなした対馬を襲撃した事件
h 正解は、「富山浦」です。朝鮮は、日朝貿易の朝鮮側の拠点を、富山浦(現在のプサン)・乃而浦・塩浦(現在のウルサン)の「三浦」に限定しました。これは正解したいところですね。
i 正解は、「按司」です。本文にあるように、琉球王国が成立する前は、グスク(城)を拠点にして按司と呼ばれる豪族が争っていました。ここで、沖縄の歴史についても基本的なことを押さえておきましょう。
沖縄の歴史で覚えておくべきことをチェック!
按司(領主)がグスク(城)を築く(12~13世紀)
※有名なグスクとして、今帰仁(北山)・浦添(中山)・大里(南山)がある
→三山(北山・中山・南山)の対立(14世紀)
→中山王の尚巴志が統一し、琉球王国が成立(1429年)
首里(都)・那覇(港)・中継貿易で繁栄・「おもろそうし」(古代歌謡)
※明から「琉球国中山王」の称号を授かっている…明との冊封体制が確立
→ポルトガル人の進出で衰退(16世紀)
j 正解は、「コシャマイン」です。受験生が間違いやすい人物として「シャクシャイン」がありますが、これは江戸時代の松前藩との交易の中で反乱を起こした人物です。以下のように整頓して覚えておきましょう。
アイヌの首長をしっかり区別しておこう!
○コシャマイン(室町時代)…和人(本州の日本人)との利権争いの中で反乱を起こした
○シャクシャイン(江戸時代)…松前藩との交易の中で反乱を起こした
【設問B】
ア 正解は、4(朱元璋)です。明の建国者については日本史でも出題されますので、ここは落とせませんね。
イ 正解は、2です。ここで、日明貿易のルートを改めて確認しておきましょう。
日明貿易のルートをチェックしよう!
日本(堺・博多) → 寧波(査証=入港して勘合のチェック) → 北京(交易)
ウ 正解は、2です。明から輸入された銅銭は「洪武通宝・永楽通宝・宣徳通宝」の三種類です。特に室町時代には、形が一定で質が良かったという理由から永楽通宝が広く流通しました。
エ 正解は、3です。
1は、「周辺諸国が中国の皇帝に対して土産物を献上」という部分が誤りです。
中国の皇帝が周辺諸国に称号を授けることが最初です。
2は、「治外法権」「関税自主権」という部分が誤りです。
治外法権や関税自主権の概念が登場するのは江戸時代の末期からです。
4は、「周辺諸国と対等な関係を取り結ぶ」という部分が誤りです。
冊封体制は、あくまでも周辺諸国が下で、中国が上という関係です。
明の皇帝が足利義満に対して「日本国王」という称号を与え、それに対して足利義満が明に従属するという形式が「冊封」という意味なのです。
オ 正解は、1です。琉球は中継貿易をやっていましたから、琉球を通じて日本に輸入されたものが朝鮮へ輸出される例もありました。それが、香木(樹木からとれる香料)・蘇木(染料や漢方薬)・胡椒などの南方産のものでした。
カ 正解は、2です。倭館とは「朝鮮が日本からの使節を接待する施設」のことで、三浦以外に置かれた場所が漢城(現在のソウル)でした。
キ 正解は、3です。1の寧波の乱は日明貿易における細川氏と大内氏の衝突事件で、朝鮮とは無関係でした。2の刀伊の入寇は平安時代のできごと、4の弘安の役は鎌倉時代のできごとです。基本的な問題ですので、落とせない問題です。
ク 正解は、4です。前期倭寇は「足利義持の禁止令」によって姿を消したわけではなく、足利義満が1392年に南北朝を合一した後、日明貿易の発展とともに衰退していきました。倭寇についての理解ができているかどうかがポイントですが、以下に倭寇の基本についてまとめておきましょう。
倭寇の基本をチェック!
○前期倭寇…主に九州北部を本拠とした日本人で、朝鮮沿岸や中国沿岸で活動
→足利義満の日明貿易をきっかけに衰退
○後期倭寇…明の海禁政策によって東南アジアに移住した中国人が多数派で、主として東シナ海などで活動
→豊臣秀吉の海賊取締令(1588年)で消滅
ケ 正解は、4です。本文の空欄の前に「津軽の」とあります。津軽が現在の青森県を指すと分かれば、1の箱館と2の松前は外れます。3の志苔館は函館市にある中世の城郭跡で、中国の銅銭が大量に出土したことで知られています。したがって4が正解となります。
安藤氏が拠点としていた十三湊は、朝鮮や中国大陸との交易の拠点として重要な位置にありました。
が北海道南部を支配するようになります。蠣崎氏はもとは武田信広を祖とし、豊臣氏や徳川氏に仕えて松前氏と姓を変えていきます。つまり、「安藤氏→蠣崎氏→松前氏」と北海道南部の支配者が変わっていくことも押さえておきましょう。
〔Ⅱ〕江戸時代の文化について






【設問a】
正解は、「糸割符」です。ポルトガル人の生糸の利益独占を阻止するのが目的で、糸割符仲間(五か所商人)に生糸の購入独占権を与えました。最初は長崎と堺と京都の商人が対象でしたが、後に大坂と江戸の商人を加えて五か所商人と呼ばれました。
【設問b】
正解は、「広小路」です。1657年に起こった明暦の大火の復興として、火除けのための大きな道を広小路といいました。その他には明暦の大火で犠牲となった人々を供養する回向院も建てられました。
【設問c】
正解は、「菱垣廻船」です。大坂と江戸を結ぶルートを南海路といいますが、このルートを通った船として有名なのが菱垣廻船と樽廻船でした。漢字4字という条件がありますので、ここは菱垣廻船が正解です。
南海路を往復した船をチェックしておこう!
○菱垣廻船…1619年に堺の商人が運航させたのが最初。日用品を運んだ。
○樽廻船…酒を運搬したが、菱垣廻船に代わって南海路の主要な船となる。
【設問d】
正解は、4です。狩野派の絵師について以下にまとめておきましょう。
狩野派の絵師をチェックしておこう!
狩野派の絵のスタイル…水墨画と大和絵を融合させたスタイル
○東山文化…狩野正信・狩野元信(元信は「大仙院花鳥図」を残す)
○桃山文化…狩野永徳・狩野山楽(永徳は「唐獅子図屏風」を残す)・濃絵(障壁画)が主流
○寛永期の文化…狩野探幽(「大徳寺方丈襖絵」)・幕府御用絵師
○明治文化…狩野芳崖(「悲母観音」)・東京美術学校
【設問e】
正解は、「京焼」です。設問文にあるように、粟田焼や清水焼を含む陶磁器の総称を京焼といいますが、代表的な人物・作品については、以下を押さえておけば十分です。
京焼といえばこの二人!
○野々村仁清…色絵を大成・「色絵藤花文茶壺」
○尾形乾山…尾形光琳(「紅白梅図屏風」)の弟
【設問f】
正解は、「蒔絵」です。日本史で登場する「蒔絵」の作品は混同しやすいので、以下に区別して押さえておきましょう。
蒔絵といえばこの二つ!
○舟橋蒔絵硯箱…本阿弥光悦の作品(寛永期の文化)
○八橋蒔絵硯箱…尾形光琳の作品(元禄文化)
【設問g】
正解は、1です。2の天海は、江戸時代に徳川家康の顧問となった僧侶です。3の隠元隆琦は、江戸時代に黄檗宗を伝え、京都府宇治市に万福寺を開いた僧侶、4の顕如は、安土桃山時代の本願寺11世宗主であり、織田信長と石山戦争を戦ったことでも知られています。
1の沢庵宗彭は、紫衣事件で処罰された僧侶として有名ですね。
【設問h】
正解は、「友禅染」です。「友禅」とは宮﨑友禅のことであり、現在では石川県の代表的な伝統産業である加賀友禅として受け継がれています。
【設問i】
正解は、「平家納経」です。設問文に「平安後期に厳島神社に奉納された装飾経」とありますので、解答は容易だったと思います。
【設問j】
正解は、1です。桂離宮は後陽成天皇の弟である八条宮智仁親王の別邸であり、数寄屋造と呼ばれる建築様式として有名です。2の大徳寺唐門は桃山文化における聚楽第(豊臣秀吉の建てた政庁と邸宅を兼ねた建物で、現存しない)の遺構、3の姫路城は桃山文化における城郭建築の代表、4の都久夫須麻神社本殿(滋賀県)は桃山文化における伏見城の遺構です。
寛永期の文化における建築については混同しやすいので、以下にまとめておきましょう。
寛永期の文化における建築をチェックしよう!
○権現造・霊廟建築…日光東照宮(栃木県・徳川家康を祀る)
※霊廟建築は神社と寺院と墓をミックスさせた建築様式と考えればよい
○数寄屋造(書院造+茶室建築)…桂離宮(後陽成天皇の弟である八条宮智仁親王の別邸)
【設問k】
正解は、3です。設問文に「古学の一派である古義学」「京都の堀川に古義堂(堀川塾)」とありますので、これは落とせない問題です。1の山鹿素行は『聖教要録』を書いて朱子学や陽明学を批判して赤穂(兵庫県)に流された古学者、2の山崎闇斎は垂加神道を唱えた朱子学者、4の熊沢蕃山は岡山藩主池田光政に仕えた陽明学者です。
【設問l】
正解は、4です。設問文に「歌学方」「源氏物語湖月抄」とありますから、これも落とせない問題です。他の選択肢の人物は国学に関係のある人物ですが、国学の発展について以下にまとめておきましょう。
国学の発展に関わる人物は“国学セブン”で覚えよう!
○契沖…『万葉代匠記』
○北村季吟…江戸幕府の歌学方(和歌に関する学問を担当)・『源氏物語湖月抄』
○荷田春満…『創学校啓』
○賀茂真淵…『万葉考』『国意考』
○本居宣長…『古事記伝』(国学を大成)
○平田篤胤…復古神道を唱える
○塙 保己一…『群書類従』(和学講談所で編纂・7歳で失明)
【設問m】
正解は、2です。設問文に「元禄期の初期に浮世絵を確立」「浮世絵の祖」とあるので、元禄期の絵師は2の菱川師宣ですね。4の鳥居清長はあまりなじみのない人物ですが、江戸時代の中期に美人画を多く残した浮世絵師です。ただ、設問文から菱川師宣を導きやすいと思いますので、落とせない問題といえるでしょう。
【設問n】
正解は、4です。4の『義経千本桜』は、竹田出雲らの作品で、近松門左衛門の作品ではありません。近松門左衛門の作品については、以下のものを必ず覚えておくようにしましょう。
近松門左衛門の作品はこれだけで十分!
○時代物…『国性(姓)爺合戦』(清に抵抗した明の鄭成功の物語)
○世話物…『曽根崎心中』『心中天網島』
【設問о】
正解は、3です。設問文で「江戸初期に刊行された通俗的な絵入りかな書きの出版物」とああるので、仮名草子が正解となります。1の御伽草子は室町時代の作品、2の黄表紙は知的でナンセンスな笑いと、現実世界を描写した写実性が特徴的な、江戸時代の本です。4の読本は勧善懲悪をテーマにした江戸時代の本を指します。特に江戸時代の化政文化における小説は非常に混同しやすいので、以下の要領で覚えるようにしましょう。
化政文化における小説は3つのグループから押さえよう!
★洒落本グループ、黄表紙グループ、読本グループの3つのグループで押さえること!
○洒落本…山東京伝『仕懸文庫』(寛政の改革で弾圧)
→ 滑稽本…十返舎一九『東海道中膝栗毛』・式亭三馬『浮世風呂』『浮世床』
人情本…為永春水『春色梅児誉美』(天保の改革で弾圧)
○黄表紙…恋川春町『金々先生栄花夢』(寛政の改革で弾圧)
→合巻…柳亭種彦『偐紫田舎源氏』(天保の改革で弾圧)
○読本…上田秋成『雨月物語』・滝沢馬琴『南総里見八犬伝』『椿説弓張月』←勧善懲悪がテーマ
おわりに
今回は、2025年度・同志社大学の日本史〔Ⅰ〕・〔Ⅱ〕を解説してきましたが、全く手も足も出ない用語というのは、それほど多くなかったと思います。
教科書を丹念に読み込み、一つ一つの用語の理解、歴史的なつながりを把握している受験生は、満点は難しいと思いますが8割程度の得点は取れているはずです。
次回は、〔Ⅲ〕と〔Ⅳ〕を解説していきますので、どうぞお楽しみに!
本日も創心館のブログにおいでいただきまして、ありがとうございました。
文責:藤井 宏昌